シコタンハコベ(色丹繁縷、学名:Stellaria ruscifolia Willd. ex D.F.K.Schltdl.)は、ナデシコ科ハコベ属に分類される多年草の1種。別名がネムロハコベ、ナギハコベ。種小名のruscifoliaはナギイカダ属のような葉を意味する。和名は最初に色丹島で採集されたことに由来する。
特徴
横にはう地下茎から多数の茎が株状で直立し、高さ5-20 cm。全体に無毛で平滑、灰白色を帯び、茎や葉に細かな腺点がある。葉は帯白緑色で対生し、やや厚く、長さ0.7-2.5 cm、幅0.3-1 cmの卵形-卵状披針形で先は尖り基部は円形-心形、基部は茎を抱き、質はかたく、毛はない。イワツメクサよりも葉の幅が広い。
花は単性で集散花序にならず、頂生または腋生し、直径約1.5 cm、花弁は5個、長さ0.7-1 cmで萼片の2倍の長さ、深く2裂し、白色。花柄は長さ4-6 cmでで花は上を向く。雄しべはふつう10個、葯は紅色で新鮮な花は赤く美しい。萼片は5個。花柱は3-4個。花期は7-8月。蒴果は卵形、萼とほぼ同長。種子は腎円形、周辺に乳状突起があり、径約1 mm。染色体数は2n=26(2倍体)、ca.50(異数体)。
分布と生育環境
東北アジア(オホーツク、アムール、カムチャツカ、樺太、千島列島、日本)の寒帯から亜寒帯に分布する。基準標本はシベリア東部のもの。
日本では、北海道(利尻島、知床半島、根室地方、阿寒山系、ニセイカウシュッペ山、富良野岳、羊蹄山)、本州(日光連山、浅間山、飛騨山脈、八ヶ岳、赤石山脈)に分布する。田中澄江による花の百名山と新・花の百名山で利尻山を代表する花として紹介されている。
海岸、亜高山帯から高山帯にかけての砂礫地、岩壁、崖に生育する。
利用
山野草として園芸されている。
種の保全状況評価
日本では環境省によるレッドリストで絶滅危惧II類の指定を受けていて、以下の都道府県のレッドリストで指定を受けている。
- 絶滅危惧IA類(CR) - 山梨県
- 絶滅危惧II類(VU) - 静岡県
- 準絶滅危惧 - 富山県、長野県
- 要注目 - 栃木県
脚注
参考文献
- 小野幹雄、林弥栄『原色高山植物大図鑑』北隆館、1987年3月30日。ISBN 4832600079。
- 久保田修『高山の花―イラストでちがいがわかる名前がわかる』学習研究社、2007年6月。ISBN 978-4054029033。
- 佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本II離弁花類』平凡社、1982年3月17日。ISBN 458253502X。
- 清水建美、門田裕一、木原浩『高山に咲く花』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑8〉、2014年3月22日。ISBN 978-4635070300。
- 田中澄江『新・花の百名山』文藝春秋〈文春文庫〉、1995年6月。ISBN 4-16-731304-9。
- 田中澄江『花の百名山』文藝春秋、1997年6月。ISBN 4-16-352790-7。
- 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1。
- 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421。
- 牧野富太郎『原色牧野植物大図鑑』北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZE。
関連項目
- 維管束植物レッドデータブック (環境省)
外部リンク
- シコタンハコベの標本 国立科学博物館標本・資料統合データベース
- シコタンハコベの標本(1908年8月に北海道利尻島で牧野富太郎が採集) 島根大学生物資源科学部デジタル標本館
- Stellaria ruscifolia Pall. ex D.F.K.Schltdl. GBIF(英語)



