『さらば青春の光 (オリジナル・サウンドトラック)』(Music From The Soundtrack Of The Who Film QUADROPHENIA)は、フランク・ロッダム監督による1979年のイギリス映画『さらば青春の光』(Quadrophenia)のサウンドトラック盤である。1979年10月に2枚組アルバムとして発表された。
解説
概要
映画『さらば青春の光』は、イングランドのロック・バンドのザ・フーが1973年に発表した2枚組アルバム『四重人格』(Quadrophenia)を原作とした。
『四重人格』は、1960年代の中期に実在したモッズという若者集団に属するジミーという名の架空の青年の人格が暴力的(A tough guy)、ロマンティック(A romantic)、絶望(A beggar, a hypocritic)、狂人(A bloody lunatic)という4つの人格から成り立っていることを取り上げた作品だった。ジミー以外の登場人物はゴッドファーザーとベルボーイだけで、17曲の収録曲のうちゴッドファーザーが「少年とゴッドファーザー」、ベルボーイが「ベル・ボーイ」で、それぞれジミーと短い会話をかわすかたちで登場した。残りの15曲のうち、インストゥルメンタルの2曲を除いた13曲は全てジミーの独白で成り立っていた。
『さらば青春の光』の原題は『四重人格』と同じくQuadropheniaであるが、『四重人格』と異なりジミーの人格が4つの人格から成り立っているという点には触れていない。そして『四重人格』には登場しない人物が多数加えられて物語が加筆され、それがジミーの独白によってではなく登場人物の日常会話によって展開する形式を採った。その結果、映画に使用された『四重人格』の収録曲の多くは部分的に用いられるに留まった。
内容
ザ・フーと関連バンドの楽曲
サウンドトラックに収録されたザ・フーの楽曲は13曲。その内訳は10曲が『四重人格』の収録曲で、3曲が未発表曲である。
メンバーで音楽監督を務めたベーシストのジョン・エントウィッスルは、『四重人格』の収録曲だった10曲のうち、「ぼくは海」と「ヘルプレス・ダンサー」を除く8曲をリミックスして、より硬質なサウンドに仕立てた。彼はまた「リアル・ミー」、「少年とゴッドファーザー」、「ドクター・ジミー」のベース・ギターのパートをディスト―ションを駆使した歪みが効いた音で自ら再録音して、リミックスに彩りを添えた。
また、「少年とゴッドファーザー」にギター、「ぼくは一人」にピアノ、「愛の支配」にフルート、金管楽器、ストリングス、「ぼくはもうたくさん」にストリングスが加えられた。さらに、'The Real Me'と'Love Reign o'er Me'のエンディングは、『四重人格』の収録版とは異なるものになった。
未発表曲の3曲はいずれも、『四重人格』制作時に全曲の作者であるメンバーのピート・タウンゼントによって書かれたが使用されなかった楽曲である。これらは映画化に際して新たに録音された。
以上の13曲にうち、映画に使用されたのは、ごく部分的な使用を含めて、『四重人格』の10曲に未発表曲の’Get Out and Stay Out’を加えた11曲である。
また、ザ・フーに関連した曲として、彼等がモッズのメンバーだったピーター・ミーデンのマネージメントの下にあった1964年に、ザ・ハイ・ナンバーズの名義でシングル発表した「ズート・スーツ」が収録された。
その他の楽曲
『四重人格』が主人公ジミーの複雑な人格や精神構造に焦点を当てたアルバムであったのに対して、『さらば青春の光』は1960年代中期のモッズをはじめとしたロンドンの若者文化を、ジミーの人格と同等かそれ以上に強く前面に映し出した映画に仕立てられた。その内容を受け入れられ易くする為に、『四重人格』の収録曲だけでなく、当時の若者に人気があったソウル・ミュージックやR&Bのヒット曲の幾つかか大々的に使用された。
以下、収録順に示す。
- 「ハイ・ヒール・スニーカーズ」(クロス・セクション)
- 「ナイト・トレイン」(ジェームス・ブラウン)
- 「ルイ・ルイ」(ザ・キングスメン)
- 「グリーン・オニオン」(ブッカー・T&ザ・MG's)
- 「悲しき雨音」(ザ・カスケーズ)
- 「いかした彼」(ザ・シフォンズ)
- 「ビー・マイ・ベイビー」(ザ・ロネッツ)
- 「ハイ・ロン・ロン」(ザ・クリスタルズ)
収録曲
※特記なき限り、作詞・作曲はピート・タウンゼント、名義はザ・フー。
- LP
- CD
※2000年に発売されたCDには、ザ・ハイ・ナンバーズのシングル「ズート・スーツ」のB面に収録されていた「アイム・ザ・フェイス」が収録された。
映画に使用されたが本作に収録されていない楽曲
映画に使用されたが本作には収録されていない楽曲を以下に示す。
- エニウェイ・エニハウ・エニホエア - Anyway, Anyhow, Anywhere
- 1965年にザ・フーの2作目のシングルとして発表された。ジミーがレコード店に立ち寄った場面でスタジオ録音版、彼が音楽専門の人気テレビ番組『レディ・ステディ・ゴー』に出演したザ・フーに熱狂する場面で1965年7月1日に出演した時の映像と音源が、それぞれ使用された。
- マイ・ジェネレーション - My Generation
- 1965年にザ・フーの3作目のシングルとして発表された。ジミーはモッズ仲間と立ち寄ったパーティーで、想いを寄せるステフがボーイフレンドのピートと踊るのを見て、かかっていた「悲しき雨音」のレコードを途中で止めて、このレコードを代わりにかける。
- 四重人格 - Quadrophenia
- カット・マイ・ヘアー - Cut My Hair
- ぼくの頭の中に - Is It in My Head?
- 以上の3曲は『四重人格』の収録曲である。
- 「ディンプルズ」(クロス・セクション)
- 「ウィッシン・アンド・ホーピン」(ザ・マーシービーツ)
- 「ブレイジング・ファイア」 (デリック・モーガン)
- 「ワ・ワツシ」 (ジ・オーロンズ)
- 「ベイビー・ラヴ」(スプリームス)
- 「ベイビー・ドント・ユー・ドゥ・イット」 (マーヴィン・ゲイ)
脚注
注釈
出典
引用文献
- Atkins, John (2000). The Who on Record: A Critical History, 1963-1998. Jefferson, North Carolina: McFarland & Company, Inc., Publishers. ISBN 0786406097
- Neill, Andy; Kent, Matt (2007). Anyway Anyhow Anywhere: The Complete Chronicle of The Who 1958-1978. London: Virgin Books. ISBN 978-0-7535-1217-3
- Townshend, Pete (2012). Who I Am. London: HarperCollins. ISBN 978-0-00-747916-0
関連項目
- さらば青春の光 (映画)
- 四重人格



